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私ね、昔――。 穏やかな表情で語ろうとする彼女とは対象的に、私は険しい表情をしていたと思う。 それは、これから語られるであろう彼女の実に同情的な過去に対して模範解答をしようと備えたものではない、自然に作られた表情だった。 相手の過去を知ることと…

おつかい

深夜、私はコンビニへ向かっていた。同居している彼女が、どうしても今日受け取らなければならない荷物があるのをすっかり忘れていたらしい。彼女はそのことで癇癪を起こし、部屋中の柔らかいものを掴んでは無造作に投げ込んでいた。なだめるより荷物を取り…

おまじない

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「ねえ。そろそろこれ、外さない?」 思いの外、すんなりと言葉にすることができた。 これというのは、ベッドの支柱と私の左足首にくくりつけられている手錠のことである。いや、足がくくりつけられているなら、足錠と言うべきだろうか。足錠の輪と輪を繋い…

親近感

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百合SS Advent Calendar 2017の18日目として書かれた文章です https://adventar.org/calendars/2268 冷たい雨が降っていた。早く温まりたかった私は少し早足で、それでいて、靴と服を汚さないよう丁寧に歩いていた。今日は私にとって特別な日なのだ。普段な…